057 スズキ グース350 エンジン分解編

2013-06-10

<旧HP2007.01.29~04.21掲載分>
スズキグース350(型式NK42A・H8年式・走行3980㎞)です。東京から松本に向かう高速道路上で焦げくさいニオイとエンジンからの異音が発生し、そのままエンジン停止。再始動できなくなってしまいました。レスキューした車両のエンジン周りは焦げくさいニオイでむせ返るほど。エンジンオイルを抜いてみると細かい金属片などが大量に混入していました。焼付きが疑われるのでエンジンを分解する作業に入ります。分解に際してはいきなりとりかからずTマークを合わせ上死点を出してから行います。吸排気バルブをフリーにしないとカムシャフトの歪みなどがおこる恐れがあるからです。

 

シリンダヘッドカバーをはずしてバルブ周りを点検してからシリンダヘッドをはずしますが、カムスプロケットを取りはずす際にボルトやピンをエンジン内に落とさないように気をつけます。カムチェーンをワイヤーなどで吊っておくとよいです。シリンダヘッドを取りはずしたら燃焼室内の汚れをスクレーパーできれいにしたあと定盤とシックネスゲージで歪みの有無を確認します。カムチェーンテンショナーを取りはずすときはスプリングの反動でいきなり飛び出すことがあるので両手で押さえながら少しずつ動かすのがコツです。

 

シリンダまで取りはずしてみるとシリンダ内はキズだらけでピストンも焼付きのキズが無数にありました。クランクシャフト大端部のベアリングは破壊されてガタガタなのでさらにクランクケースの分解が必要となりました。

 

分解した左側のクランクケース内部です。ギヤ部分、シフトカム、クランクシャフトなどの汚れとともに底部に黒いかたまりがあるのですが、これが破壊された部品の破片です。

 

左の写真は右側クランクケース内のオイルポンプ部です。細かい金属粉とヘドロ状の汚れで高熱にさらされた様子が見てとれます。ユーザーによるとエンジンが停止した直後、エンジンオイルがボコボコと音をたてて沸騰していたそうです。右の写真はクランクシャフト大端部です。ベアリングが破壊されて向かって右側のすきまが大きくなっていてスムーズに動きません。こうなってしまってはクランクシャフトをアッセンブリで交換しなければなりません。

 

オイルポンプを分解してみるとフィルターに多量の金属粉がたまっていました。エンジン内部の損傷がいかに大きいかがわかります。トロコイドポンプは再使用可能なのできれいに洗浄して組み付けます。

 

 ミッションギヤの動きがおかしいのでギヤシフトカムシャフト、ギヤシフトシャフトを取りはずすと驚くことに「ギヤシフトシャフト取り付け穴」が破損していました。これではギヤシフトシャフトが固定されず、カムシャフトも横に動いてしまうので変速できません。

 

左の写真。クランクケースを交換すればいいのですが予算の関係で補修して使うことになり、アルミデプコンで成形し一日おいて乾燥したらシャフトを入れて修正し強度を確認します。ただし大きな荷重がかかる箇所にはこの方法は使えないので交換が必要となります。右の写真はクランクケース内に使用されているベアリングです。上が破損したベアリング、下が新品です。ガタつきや引っかかりなどがあるベアリングは新品に交換となります。

 

新品のベアリングをクランクケースに打ち込んでいるところです。サイズの合うベアリングプレッシャーでまっすぐに打ち込むことがポイントです。プレッシャーのサイズが異なるとベアリングを破損する恐れがあり、また斜めに打ち込んでしまう危険性もありクランクケース割れなどにつながるため注意が必要です。

 

新旧ピストン・クランクシャフトの比較です。 破損しているのは右側ですが全体に焼けて黒くなってしまっておます。特にピストンには明らかに焼付きのキズがあるのがわかります。

 

左の写真は左クランクケースに新しいクランクシャフトとピストン、ミッションギヤ、バランサーなどを組み付けたところです。デプコンで補修した穴にギヤシフトシャフトもうまく収まりました。この、クランクシャフトとバランサーを組むときは ポンチマークをきちんと合わせることが大切です。右の写真で4分割してしまっているのはクラッチハブが焼けてバラバラになってしまったクラッチドライブプレートです。それぞれ新品に交換となりました。

 

右側クランクケース内の破損してしまったベアリングを再び組み付け、さらに洗浄してから組み立てておいたオイルポンプを取りつけます。その後ケースの合わせ面を清掃脱脂して液状ガスケットを薄く塗布します。

 

新旧ジェネレーターコイルの比較です。焼け焦げてボロボロの左側のものを右側の新品に交換します。

 

左はクランクケースにクラッチAssyを組み付けたところです。この状態で作動状況を確認します。このときカムチェーンのかみ込みに注意します。
右の写真は前述の作動状況を確認したあと反対側にフライホイールを組み付け、スタータギアも取り付けたところです。こちらもスムーズに回転するか確かめます。

 

これはシリンダの内部ですが焼付きによって内壁にキズが入ってしまっています。グースはメッキシリンダなのでボーリングはできません。新品への交換となります。

 

新品のピストン、シリンダを組み付けたところです。このときカムチェーンを落下させたりかみ込んだりしないように注意します。またゴミなども入らないように 気をつけます。

 

シリンダヘッドを組み付けてボルトナットを均等に対角に締めつけていきます。カムシャフトを組み付けるときは必ず上死点を出し合わせマークを正確に合致させる(クランクシャフトを2回転させてフライホイールの合わせマークが一致させる)ことが大切です。

 

 

エンジンの組立てのときは必ずトルクレンチを使用し、指定のトルクで締めつけることが基本中の基本です。締めすぎてもゆるすぎても正常に作動しないからです。

 

 

 

 

 

 

 

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