091 ホンダ リード90 エンジンオイル充満編
<2016.7修理分>
しばらく乗らずにいたところセルが回らずキックも動かず、エンジンがかけられなくなってしまいました。症状としては特異なものではなく比較的ありがちなものなのでまずバッテリーを充電します。キックのほうはクランクケースカバーを取りはずして点検しましたが異常はありませんでした。
そこでピストンの焼付きを疑い点火プラグをはずしてみるとオイルでベトベトしています。この状態でキックをしてみたところキックは動くもののプラグ穴からオイルが吹き出してきました。上の写真はトランクボックス、マフラーを取りはずしたところです。排気口の下がオイルで汚れているのが見てとれます。
以上のような状況から、もしかしてセルが回らずキックも下りなかったのは一次圧縮室にエンジンオイルが充満してクランキングできなくなっているからではないか、と推測しシリンダヘッド、シリンダを取りはずしてみるとこのようにあふれんばかりのエンジンオイル(青い液体)がたまっていました。このエンジンオイルを吸い出してオイルポンプの点検・修理をするためには車体からエンジンを下ろす必要があります。
これはエンジンを下ろしたところです。この状態でオイルポンプを調べてみると内部が破損してオイルが垂れ流しの様相になっており、これが一次圧縮室内に流れ込んで2枚目の写真のようになっていたことがわかりました。30年余りの整備・修理歴の中でもこのような事例は初のことでした。
上はスポイトでエンジンオイルを吸い取りクリーナーで清掃したところです。このあと原因となった破損したオイルポンプを新しいものに交換します。このような、オイルポンプやオイルホースの交換を伴う修理をしたときにはエア抜きを確実に行わないと焼付きを起こす要因になりかねないので注意が必要です。
再びすべてを取り付けてキックしたところ2回目でエンジンが正常に始動しました。このまましばらくアイドリングさせて状態が安定していることを確認します。この写真のようにマフラーから白い排煙が出ているのが正常な状態です。これは潤滑したエンジンオイルが燃焼して出るものだからです。逆に排気煙が無色だった場合にはエンジンオイルが内部できちんと潤滑していない恐れがあるため、いったんエンジンを止めて改めてオイルパイプやオイルホースを点検する必要があります。